その日は 必ずやってくる
- vol.56/コンプレサー通信2020年6月号掲載
ぶるるる。知らない番号から電話がかかってきた。
「はい、元マジシャンのコンプレッサーです、と言いたくなるような日が続いていますが、現在もマジシャンのコンプレッサーです!」
コロナの影響を自虐ネタにして自己紹介すると、女性が笑いながら話し始めた。
「夏前にファミリーイベントを企画しているのですが、出演いただけませんでしょうか」
「そりゃもちろん、喜んでお受けしますが・・・」
久しぶりのオファー、うれしいけれどコロナのことが気になって少し戸惑うコンプさん。
「あらー、よかった、ありがとうございます。大人も子供も一緒に楽しめるパーティーにしたいのです」
女性の明るい声が続く。
「コンプさん、お酒は好きですか?」
「はい、大好きですよ」
「それはそれは。お席を用意しますので是非一緒に楽しんでください。ホテルもとっておきますね。」
なんだか夢を見ているようで、現実感がない。
数ヶ月前なら普通の会話なのに、胸がじんわり熱くなる。
女性が申し訳なさそうに続けた。
「コロナのことがあるので、決定はギリギリまで待っていただけませんか?」
承諾するコンプさん。
いつのまにか、キャンセルにも慣れてしまったなぁ。
「パプリカってご存知ですか?お野菜の話じゃなくって、ダンスのパプリカ、みんなで踊ることになっているの。私も練習して覚えなくっちゃ」
「それは楽しそうですね!」
「イベントの締めははみんなで勇気100%を歌うことになっているの。コンプさん、知ってますか?是非ご一緒に!」
そう言い残して電話が切れた。
大勢が集まって食事を楽しみ、歌ったり踊ったり。
ごく普通の光景がすごく懐かしいなと思う。
だけど、その日は必ずやってくるんだよね。
そう思わせてくれた電話に感謝せずにはいられなかった。