思い込みは怖い

  • vol.15/コンプレサー通信2017年1月号掲載

「病院のポイントカード、全部たまったら墓石プレゼント!」

というネタを次々繰り出し、十五年ほど前にお笑いコンテストで賞をいただきました。懐かしいなぁ。

まだマジックを趣味としてはじめる前の話。

マッサージ店のポイントカードをみながらそんなことを思い出す。

あの頃は肩こりとは無縁だったのに。

肩甲骨あたりの違和感がどうしても治まらず、病院にいったら

「年齢のせいですね」

と言われました。

四十を過ぎるといろいろなところに歪みがでてくるのね。

マッサージ中、くつろいでいたら耳もとでささやかれた。

「肩こりはマジックで治らないんですか?」

コンプさんだと気づいたのね、うれしいような恥ずかしいような。

次第に意識が遠のいていき、自分のいびきで飛び起きるという不始末。

あぁはずかしい。でも寝てしまうよりいいか。

以前、開始直後に熟睡、目が覚めた瞬間「終わりました」と、言われたときの残念すぎる記憶がよみがえる。

若く、か弱そうな女性が担当になったことがあったっけ。

まだ慣れていないご様子で、ちょうどいいところを絶妙によけてマッサージ。

どの世界も、プロになる前は素人なわけで、必ずその境界線というのがあるのね。

生まれて初めて手術をするお医者さんよりマシか!と、自分にいい聞かせる。

一生懸命な様子をみていたら、応援したくなってきた。

そうか、上手じゃなくても、お客さんの気持ちをつかむ事ができるのか。

プロ生活が、夏に九年目を迎えます。

経験や知識が凝り固まって歪んではいないだろうか。

自分でつくったマジックの常識に、束縛されてはいないだろうか。

傲慢ではなく、慎重に疑ってみようと思う。

『思い込み』ほど無意味で怖いものはない。

来年、十周年を迎える自分に期待して。

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