先生の涙
- vol.31/コンプレサー通信2018年5月号掲載
テーブルマジックのお仕事を終え、高速道路に飛び乗った。
ショーがうまくいったこともあって気分がいい。
一人きりの車内がカラオケボックス状態に。
大声で歌っていたら、突然、中学時代の担任、М先生のことを思い出した。
М先生は新任の女性教師。小柄で明るい先生だったなぁ。
クラス対抗合唱コンクールのようなイベントがあって、練習が始まった。先生の提案で、昼休みも練習をすることに。
「休み時間なのに、なんで練習しなくっちゃいけないの!」
と、軽い反発心からクラスメイトのI君を誘っておさぼりすることに。
格技場の畳の上で時間をつぶしたっけ。
クラスのみんなが練習している姿を思うともやもやしたなぁ。
コンプさんとI君はМ先生に呼び出された。小部屋に先生が一人で待っていた。
「どうして練習に来なかったの?」
「・・・休み時間は休みたい。友達と遊びたい。」
コンプさんは言い訳をした。うつむいたまま先生の次の言葉を待つ。
「ごめんね」
以外な言葉に驚いて、顔を上げた。先生の目から、すーっと涙がこぼれた。
「ごめんね。先生、合唱コンクールに向けて、勝手にクラスが一つになっていると思っていた。休み時間は、休みたいよね。ごめんね。」
行動をとがめられると思っていたのに、先生がボクに謝った。
芽生えた反抗心が空しかった。先生はその後、普段と変わらない様子で授業をしていた。
翌日から休み時間の練習はなくなった。コンクールに出場したのかどうか、その後のことは覚えていない。
今に思えば、初めて大人の人に、素直に謝られた瞬間だったんだと思う。
先生の涙が教えてくれたものは大きかった。
帰宅したら、中学生の息子が夕飯を食べていた。
子供と大人の狭間、いろんなことがあるんだろうな。
今を楽しめ!頑張れ!父ちゃんも負けねぇぞ。