突然手が動かなくなる。ショーマンシップとは?
- vol.7/コンプレサー通信2016年5月号掲載
三年前、突然左手に違和感が。
力強く握れないし、しっかり開くこともできない。
このままじゃマジックができなくなる・・・。
せっかく軌道にのってきたマジシャンとしての生活。
考えれば考えるほどお先が真っ暗に。
麻雀で負けたお坊さんが「この世には神も仏もいないのか」と言った、笑い話を思いだす。
あー、なんとかして、コンプの手!
悩んでいても解決はしない。
ショーをしなければ生きていけない。
そうだ、『手品』という漢字は『手』よりも『口』のほうが多い、と誰かが言ってたなぁ。
コンプがしゃべって、ともやんにマジックを演ってもらおうか。
芸名はコン&トモ、衣装はジャージで。
だめだめ、もっと現実的に考えよう。
おしゃべり中心の超能力ショーや、細かい動きの少ないイリュージョンなら問題ないかも。
片手でできるマジックをリストアップしてみる。
思った以上にどの作品も、微妙な手の動きが大切なことに気付く。
やっぱり、マジシャンは手が命。
不安でどうにかなりそう。
その翌日『ショーマンシップ』をテーマにした講演と、マジックのお仕事が。
「ショーマンシップとは観客を喜ばせようとする芸人の心意気の事です。普段の生活の中で、みんながショーマンシップを発揮したら楽しそうでしょ!日本全国芸人化計画、わははは」
動きのおかしい自分の手の事で頭がいっぱいのコンプさんに、ショーマンシップを語る資格はあるのか、と心の中でツッコミを入れる。
「それではマジックをご覧いただきましょう!」
おびえていたマジックタイムがスタート。
覚悟を決めてやるしかない!
「切ったロープが、なんと・・・今日は、つながらないようです。選んでもらったトランプを当てます。たぶん、ハートの3・・・4かな?5だといいなぁ・・・」
思った以上に動かない左手。なんとか必死にその場を乗り切った。
客席の笑い声に救われた。
病院での検査の結果、神経に傷が見つかった。
スポーツジムでの筋トレが原因だという結論に。
始めたばかりだったので、気合いを入れすぎたのね。
その後、手の違和感は少しずつ回復、現在は完治しています。
誰だって、いつ、どこで、何が起こるかわからない。
だからこそ、笑って生きていけたらな。
本当のショーマンシップとは?
奥が深い。