苦手だった理由
- vol.53/コンプレサー通信2020年3月号掲載
家族のみんなが「犬がほしい」と言い出したとき、本当は乗り気じゃなかったコンプさん。
だって、犬が苦手だったんだもん。
ところがタイミングよく、知人の家でトイプードルが産まれたことを知り、会いに行ったらトントン拍子で飼うことに決まった。
しかし、なんでこんなに犬が苦手なんだろうとじっくり考えていたら、幼いころの出来事をいろいろと思い出した。
兄が近所の犬に嚙まれた時は、とにかく怖かった。
学校帰りに野良犬に出くわした時の半端ない恐怖は、今でもハッキリと覚えてる。
今じゃ考えられないけど、あの頃、野良犬がいたんだよなぁ。
逃げると追いかけてくるから、小石を遠くに放り投げて、そっちに気を取られた瞬間に一目散に逃げるのが一番の作戦だったっけ。
逃げ切れたときは、大冒険を終えたような気分になったよなぁ。
小学校に行く途中、子犬を拾ったことがあったっけ。
茶色くて、まだ毛の薄い、よちよち歩きの子犬だった。
生まれたばかりだったのかもね。
そっと持ち上げたら、あったかくて、すごくかわいかった。
このままじゃ死んでしまうと思い、学校に連れていったはいいものの、先生に言うことができず、体育館の小部屋にこっそり置いておいた。
休み時間ごとに友達と様子を見に行った。
誰も家に連れ帰ることはできなかったから、こっそり学校で飼おうという話になったのだ。
今考えると無茶苦茶な話だけど、あの時は本気だった。
給食後の休み時間、こっそり残した食べ物をワンちゃんのところに持って行ったら、死んでいた。
あんなにあっさり死ぬとは思っていなかったから、ショックが大きかった。
冷たく固まってしまったワンちゃんを見ていたら、取り返しのつかないことをしてしまったという罪悪感と、正体不明の恐怖心に襲われた。
グラウンドの隅にあるイチョウの木の下に穴を掘って、お墓をつくったっけ。
その後、モヤモヤがずっと心に住み着いて消えなかったんだ。
犬が苦手な理由は、それなのかもしれないなぁ。
飼うことに決めた今、そんな苦手意識がどんどん消えていく、不思議な感覚を味わっている。
かわいい動画が送られてくるたびに愛おしさが増して、会いに行くたびに早く一緒に過ごしたいという思いが強くなる。
家族の中で一番楽しみにしているのは、コンプさんなんじゃないかと思うほど。
夢にまで出てくるくらいだからね。
モヤモヤと心にひっかかっている記憶は、消そうとするよりも、楽しいエピソードで書き換えていくほうがいいのかもしれないね。
名前は「あお」ちゃんに決まりました。
あと数日で、我が家にやってきます!

