失敗するほうがいい
- vol.14/コンプレサー通信2016年12月号掲載
プロになったばかりの頃、忘年会の最中に突然腹痛が。
「マジックで治してきます!」と皆に伝えてホテルにもどる。
「痛いのいたいの飛んで行け」
苦しみながら呪文を唱えても治まらず、翌朝病院へ。
大きな病気かもと、おびえている中、先生からひと言。
「食べ過ぎ飲みすぎには気を付けてください」。
年末年始の一番楽しいタイミングに食べれない、飲めない苦しみを味わったのでした。
忘年会が続いてイヤな予感はしていたのにね。
どうしてその日のために我慢ができなかったんだ、と自分を責める。
『肉体は精神の象徴、病気は生活の赤信号』という言葉知ったのは最近の話。
そのころの自分に教えてやりたい。
調子が回復しない中、ラスベガスへ。
マジシャンたるもの、本場のエンターテイメントを体感しなければお話しにならないもんね。
ペン&テラー、マックキング、カッパーフィールドなど大好きなマジック界のスーパースターたちのショーを観て大興奮。
気づけば胃腸の調子が回復してた。マジックのおかげ?
嘘みたいな、本当の話。
当時のコンプさんは、宴会やイベントでの出演ばかり。
目的が別にある中でのショーと、そのマジシャンだけが目的の公演との違いを目の当たりにして、このままではいけないという思いに襲われた。
そして、毎年単独ライブを開催することを決意したのでした。
毎回新作で挑む長時間ライブ、演じ慣れた作品に比べると、完成度が低いのに喜んでいただける不思議な感覚。
失敗して、凹んでいるコンプさんの心に響いたのが、落語家のお偉い師匠からいただいた言葉でした。
「どんな名人の演技でも自宅で簡単に、DVDで観れる時代。なのに、なぜ、わざわざ足を運んで、生の舞台を観に来てくれるのか?という事を考えなくてはいけない。段取り芸を見せる時代は終わったんだろうねぇ」
鮮度を失うくらいなら、挑戦を続けて失敗するくらいのほうが、いいのかもね。