馬子にも衣装、マジシャンの衣装
- vol.19/コンプレサー通信2017年5月号掲載
息子が中学生になった。
学ランを着ると、ちゃんと中学生に見えるからおもしろい。
人は、衣装でイメージがかわるのね。
サラリーマン時代、趣味でマジックを始めた頃、おもちゃ屋さんの仮装コーナーで、キラキラ光るスパンコールのベストを購入。
ビジネススーツのジャケットを脱いで、それを着るだけで芸人に見えた。
馬子にも衣装、どんな人間でも、身なりを整えればそれっぽく、立派に見えるのだ。
出張で東京へ。
用事を済ませ浅草にあるステージ衣装のお店へ。
趣味とはいえ、出演依頼が増え続け、本格的な衣装がほしくなったのだ。
迷うコンプさんに、上司が赤いスーツを選んでくれた。
赤いスーツで舞台に登場した時の、客席の反応の良さに驚いた。
みんな、ぱぁっと明るい表情になるから不思議だね。
それから数年、赤いスーツを定番にした。
イベントで着ぐるみを着たことがあった。
子どもたちはおおはしゃぎ。
抱きついてくる女性もいたなぁ。
中身がコンプさんだとは知らずにね。
悪い気はしないんだけど、なんだか考えさせられた。
赤い衣装、仮装、変装。
自分自身の魅力とは無関係な影響力への違和感。
それをきっかけに、特別な衣装を着なくても、普通のスーツで舞台にたっても、キラキラ輝ける芸人になるぞ!
と、心に誓ったのでした。
「人は見た目よりも中身だと思っている人が多い」
というアンケート結果を読む機会があった。
その理由も興味深い。
「見た目のよさだけでは、いずれ化けの皮がはがれるから」
「老いて、最後に残るのは人間性」
芸の世界にも当てはまるなぁ。
「芸は人」だもんね。
プロ生活九年目にして、ようやく普通のスーツで舞台にたちはじめた。
一見普通のおじさん、一見普通のマジシャンの今後の展開やいかに!