自分の年齢にあったマジックショー ― プロ18年目の気づき

年齢にあったマジックショー イラスト


プロマジシャンとして活動を始めて、今年で18年目を迎えました。

18年。

こうして数字にしてみると、なかなかの年月ですね。なりたての頃はただ必死で、毎日のように「この世界、向いていないのかも」と思っていたのに、気がつけばここまで歩いてきていました。

最近ふと思うのです。18年前の自分と今の自分では、同じ「マジックショー」をやっていても、まったく違うものを届けているんじゃないかって。

なりたての頃 ― 技術で勝負していた時代

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プロになったばかりの頃、いつも百点をとらなきゃ!と思っていました。

結果を残さないと次のお仕事が無くなりそうで、怯えていたのね。ショーがある日は朝からずっと緊張していて、何度舞台に立ってもドキドキする。「この世界は向いていない」と思った時期もありました。

当時は「すごいマジック」を見せることが全てだと思っていました。派手な演目、スピード感のある展開、次から次へと不思議な現象を畳みかける。とにかく技術で圧倒しなきゃ、と。

若さゆえの勢いがあったからこそできたことも多かったと思います。でもその分、お客様の表情をじっくり見る余裕なんてなかった。目の前の手順をミスなくこなすことで精一杯だったのです。

年齢とともに変わったもの

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あるとき、FM とやまのディレクター虎平太さんにこう言われました。

「プロは七十点や八十点の日があってもいいけど、六十点以下になってはいけない」

この言葉が、すとんと腑に落ちたのです。

百点を毎回とろうとするのではなく、絶対に六十点を下回らない。しかもそれを一生とり続ける。それがプロなんだと。

この考え方に出会ってから、肩の力がすっと抜けました。完璧を目指すことよりも、目の前のお客様と「今、この瞬間」を一緒に楽しむことに意識が向くようになったのです。

技術よりもコミュニケーション。不思議な現象よりも、笑い。速さよりも、間(ま)。

先日、お寺の新年会でトランプ1つで45分間のショーをさせていただきました。なりたての頃なら考えられないことです。あの頃は大きな道具をたくさん持ち込んで、それでも「足りないんじゃないか」と不安でした。

でも今は、トランプ1枚あればお客様と会話ができる。会話ができれば笑いが生まれる。笑いが生まれれば、そこに温かい空間ができる。

18年かけて気づいたのは、「手品」という漢字は「手」よりも「口」のほうが多い、ということでした。

「年老いた手品師」が教えてくれたこと

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以前、あるイベントでこんな光景を目にしました。

キラキラのアイドル衣装を着たおじいちゃんの手品師が、瞬間移動のマジックを演じていたのです。ステージから客席後方に移動する演出なのですが、実際にはスポットライトの下に、息を切らしたおじいちゃんが必死に走り込んでくる姿が映し出されていました。

客席からは最初、笑い声が起こりました。でもそれは、やがてあたたかい拍手に変わっていったのです。

あの光景を見て、深く考えさせられました。

同じマジックを演じるのにも、その年齢に応じたスタイルというのがあると思う。体力は必ず衰えていくからね。

衣装や化粧で見た目はごまかせても、発する言葉や醸し出す雰囲気には、その人が出るからね。

だからこそ思うのです。時間の流れに逆らって若さを追い求めるよりも、年を重ねるごとに深みが増していくマジシャンでありたいなぁと。

今だからできるマジックショー

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18年前にはできなくて、今だからこそできることがあります。

たとえば、開演前にお客様の名札をチェックして、お名前を覚えてからショーに臨むこと。テーブルマジックの途中で「○○さん、このカード覚えていてくださいね」とお声がけするだけで、距離がぐっと縮まります。

たとえば、会場の雰囲気を瞬時に読んで、演目の順番を変えること。縦長の会場ならステージを短くしてテーブルマジックをメインにする。銀行さんの催しなら「お金のマジック」を入れる。こういった引き出しは、18年分の現場でしか手に入らないものです。

先日の結婚式の披露宴では、開宴前の待ち時間にテーブルマジックをさせていただきました。一人で参加されていたゲストの方が、こうおっしゃったのです。

「知り合いがいなくてどうしようかと思っていたけれど、ここに座っていたら安心だ」

この言葉を聞いたとき、マジックは単なる不思議な現象を見せるものではないんだと、あらためて感じました。見知らぬ人同士をつなぐきっかけになれる。不安を抱えた人の居場所になれる。

なりたての頃は「すごいね」と言われたかった。今は「ありがとう」と言っていただけることが、何よりうれしい。

これからの自分へ

一方的に準備したマジックを演じればいいというものではない。心に残るショーは、その時々で変わるのだと、18年かけて学びました。

ハプニングだって、神様からの演出だと思えるようになりました。以前、マジックショーに道具一式を忘れて行ったことがあります(笑)。百円ショップでトランプとロープを買って、ビニール袋を持ってステージに登場したら、それが大ウケでした。なりたての頃なら真っ青になっていたでしょうね。

年齢に抗うのではなく、年齢を味方にする。

若さには若さの、経験には経験の良さがある。今の自分にしかできないショーが、必ずある。

このマジックという世界の既成概念にとらわれることなく、これからも僕自身の道を歩んでいこうと思います。

最大最高の演出力とは、自分自身が夢中になってとことん楽しむ姿を見せること。

18年目の今、心からそう思えるのです。

大変だけど、その分喜びも多いこの世界。

生きてる実感が半端ない。

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