倫理法人会 講話:テーマ「ことばの力」すべて文字起こしでご紹介。

にいかわ倫理法人会で講話 テーマは「ことばの力」!
こんにちは!マジシャン コンプレッサーです!
先日、にいかわ倫理法人会で講話の機会をいただきました。今回のテーマは「ことばの力」。
ふだんラジオやステージで言葉を使うことが多い仕事をしているせいか、言葉の大切さを感じる日々です。ふとしたひと言で人の気持ちが和らいだり、逆にチクッと刺さったり。言葉って不思議ですよね。
よく「口がすべった」なんて言いますけど、実はそれって、自分の中にあるものがポロッと出ただけなんじゃないかなと。だから最近は、言葉そのものよりも、「どんな自分から言葉が出ているのか?」っていうことを、意識するようにしています。
結局のところ、言葉を磨くには、自分自身を整えていくしかないんですよね。大げさなことはできませんが、日々の生活の中で、できるだけ素直に、正直に過ごすこと。そこから出てくる言葉なら、きっと届くんじゃないか。そう信じて、私もまだまだ修行中です。
ラジオのリスナーさんが駆けつけてくれました!
今回の講話でとっても嬉しかったのが、なんとラジオのリスナーさんが私の講話を聞きに来てくれたことです!
「コンプレッサーさん、あの時のラジオ、ほんとに力をもらってました」とお声がけいただきました。もう涙ちょちょ切れですよ…!
あのコロナ禍、自分自身も本当に苦しくて、ただただ正直な気持ちをラジオで話していただけ。でもそれが“誰かの心に届いていた”という事実に、本当に救われました。
そんな思いもいっぱい込めて、今回の講話。全力でお届けさせていただきました!
ここからは約40分間の講話を文字起こしでお届けします!

皆さん、おはようございます。 富山県倫理法人会で副幹事長を拝命しております、株式会社コンプオフスの高畑と申します。普段はマジシャンの「コンプレッサー」という芸名で活動しております。
はじめに:鳩の出ないマジシャンです
ええ、今日は残念ながら鳩は出ません。というか、普段から鳩は出さないのです。だって「登場前の鳩の気持ちを考えると辛くなっちゃって…」なんて言うと、田辺さんに「またそんなこと言って!」と怒られそうですね、すみません。ともかく、マジシャンをやっております。
さて、そうですね、今年は実は私にとって、始まった瞬間から最悪な1年のスタートだったんです。
波乱の幕開け:次々と襲いかかる試練
何があったかと申しますと、年末くらいから妻が体調を崩しまして、本当になんだかぐったりしている日が続いていました。そして、年が明けて4日ごろにはほとんど歩けなくなってしまい、私が車を運転して一緒に病院へ向かいました。そこで告げられたのは、即入院。結果は肝炎で、肝臓の病気を患ってしまったのです。数値がとにかく悪くて、「もしかしたら病院から出られないかもしれない」とまで言われ、本当に目の前が真っ暗になるような気持ちでした。
幸い、今は退院して元気に過ごしています。お酒も嗜んでいますし、どうやら生魚が原因だったようなのですが、一緒にお寿司も食べに行きました。すっかり復活してくれて、本当にホッとしています。
ところが、妻が退院してしばらくした頃、今度は私が猛烈な腹痛に襲われたんです。突然の激痛に「これ、一体何なんだろう?」と思いながら耐えていたのですが、夜中にどうしても我慢できなくなり、人生で初めて救急車のお世話になることに。病院に運ばれ検査してもらった結果、その日は原因不明。翌日、尿管結石だと判明しました。
これが、もう、ものすごく痛いんです! しかも、お医者さんに行ったところで尿管結石に特効薬はなく、「とにかく水をたくさん飲んで、石が出るまで頑張ってください!」という、ある意味、体育会系なエールを送られて診察終了。
「これからどうしよう…」と途方に暮れました。結果的に痛みが和らいだのは、それから2週間も経ってからでした。その間、本当に10分おきくらいにトイレに行きたくなり、行っても赤いものがちょろっと出るだけ、という辛い日々。そんな状態でもマジックショーは待ってくれません。トイレを我慢しながら「内股でのイリュージョン」ですよ。お客様には笑顔で手を振りながら、内心は脂汗だらだら。本当に大変だったんです。
笑い話に聞こえるかもしれませんが、あまりの痛みに耐えかねて、実はおむつも履いてステージに立ったんです。ええ、もう誰にも見せられない舞台裏ですけどね。まあ、その結果、おむつを履いてもおむつの中では用を足せないものだという、新たな発見もありました。人間、そういうものなんですね。
さて、ようやく石も出て、「ああ、よかった。これでやっと落ち着ける」と。次こそ良いことが巡ってくるのかな、なんて淡い期待を抱いていた矢先、今度は明け方に父親から電話がかかってきました。父親は今76歳くらいなのですが、「まあ落ち着いて聞いてくれ」と。話を聞くと、74歳になる母親が明け方に救急車で運ばれたと言うのです。
「ええっ!?」と絶句しました。実は母親は心臓に持病があり、背中が痛いと言って運ばれたと聞いて、「もしかしたら…」という最悪の事態も覚悟しました。その日はちょうど富山県倫理法人会会議があったのですが、遅れることをお詫びして、病院へ駆けつけました。診断の結果は、腰の圧迫骨折。すぐに命に関わるということではなかったものの、結局その後1ヶ月近く経った今も入院生活が続いています。本当に、今年は次から次へと試練が降りかかってくるんです。
そして追い打ちをかけるように、私の会社、株式会社コンプオフィス――まあ、自分のマネジメント会社のような、こぢんまりとした会社なのですが――の決算が2月末でして。2月の下旬頃だったでしょうか、数字をチェックしたら、どうもおかしい。売上が、去年に比べて100万円ほど少ないんです。さらに詳しく見ると、60万円ほどの赤字になっている。「あれれ?」と。 「なんて年なんだろう…」と、さすがに気が滅入りました。
暗闇の中の光:倫理法人会の学び
でも、そんな私の内情を、おそらく周囲の皆さんはあまり感じていらっしゃらないと思います。
なぜなら、この倫理法人会で学び続けているからです。私も入会して約10年になりますが、「苦難は幸福の門」「明朗・愛和・喜働」――つまり、明るく、仲良く、喜んで働く、という教えを実践しようと努めているからです。だから、私の苦境は周りにはあまり伝わっていないのだろうな、と感じています。
逆に言えば、もしこの学びがなかったら、これだけ心が折れるような出来事が続いた中で、自分はいったいどうなってしまっていたのだろう、と。
不思議とそんなに落ち込んではいないんです。「よし、これをバネにして、何か前向きな力に変えていこう!」という気持ちが湧いてくる。これこそが、この会の学びの素晴らしいところだと実感しています。そして、そんな時に自分を支えてくれるのが、数々の「ことばの力」。困った時、辛い時に、ふと心に浮かぶ言葉が、背中をグッと押してくれる。この倫理法人会で、毎週のようにそうした前向きな、良い言葉のシャワーを浴び、心と体に染み込ませているからこそ、前向きに生きていられるのだと感じています。
言葉のシャワーと「幸せのセンサー」
私、実は読書が大の苦手で、これまで本というものをほとんど読んでこなかった人間なんです。でも最近、「オーディブル」という耳で聞く読書にすっかりハマってしまって。これが本当にすごいんです。素晴らしい言葉の宝庫で、聞いているだけで心が豊かになります。
たまたま聞いていた中で特に心酔したのが、吉本ばななさんの『幸せのセンサー』というエッセイ集。エッセイなんて、それまで一度も読んだことがなかったのですが、この本には素晴らしい言葉がたくさん詰まっていて、夢中になって10回ほど連続で聞いてしまいました。体中にその言葉を染み込ませたい、と思ったんです。
その中に、とても気に入っている言葉があります。それは、「私にとって最悪な日でも、誰かにとってはバースデーかもしれないじゃない」そして、その逆もまた然り、ですよね。今年に入ってから次々と起こる出来事を振り返った時、「ああ、そうか。今はたまたまこういう状況だけど、これは必ず好転する瞬間が来るはずだ」と。これは、まさに倫理法人会で学んでいることと同じだな、と改めて思いました。言葉への感度を高めることができるのも、この会の良さだなぁと思うのです。
視点を変えれば、苦難も感謝に
つらく感じた出来事も、視点を少し変えてみるだけで、「ありがたかったな」と思えるんですよね。
例えば、妻が体調を崩して入院した時のこと。我が家には3人の子供がいるのですが、母親がいない生活を、子供たちは精一杯支えてくれました。ご飯を作ったり、洗濯をしたり、普段は任せきりだった家のことを、みんなで力を合わせてやってくれたんです。その姿を見て、子供たちの成長を感じると同時に、妻の存在の大きさに改めて気づかされました。
そして私自身も、そばにいて当たり前だった妻のありがたさを、心の底から実感しました。退院後は、それまで以上に夫婦仲が良くなり、妻をより大切にしようという思いが自然と湧いてきたんです。
尿管結石で自分が苦しんだ時も、同じようなことを感じました。体調を崩して動けなくなると、改めて「体が資本」だという基本中の基本を思い知らされます。マジックショーは健康でなければできませんし、仕事ができなければ収入もなくなります。だからこそ、日々の生活習慣を見直し、体調管理を怠らないことの大切さに気づくきっかけになりました。これもまた、感謝すべき出来事だったと思っています。
そして、母親の入院。実はこれも、大切なことを教えてくれる出来事になりました。
病院へ向かう車の中で、ふと「家族の健康」について考えました。そういえば少し前、妻も入院していたなと。そしてその時に、不思議と子供の頃のある出来事を思い出したんです。
それは、私が保育園の年長さんで、兄が小学校低学年だった頃のこと。両親がそろって、母の実家である石川県の輪島へ出かけたことがありました。ちなみに、その輪島の実家や親戚の家は、今年の地震で大きな被害を受けた場所でもあります。
その日、私と兄は初めて二人だけで留守番をすることになり、私は少しワクワクしていたのを覚えています。「今日はお兄ちゃんと二人きり!何時に帰ってくるのかな?」と。でも、しばらくすると兄が急に高熱を出してしまって、状況は一変しました。
どうしよう、と思いながらも、なんとか兄を助けなければと必死でした。布団を敷き、氷で冷やしたタオルを頭に乗せ、見よう見まねでおかゆも作ってみました。
一番印象に残っているのは、ストーブの一件です。兄が「寒い寒い」と言い出したので、ストーブをつけようとしたのですが、当時のストーブは今のようにボタン一つで点火するタイプではありませんでした。しかも電池が切れていて、仕方なく蓋を開けてライターで火をつけようとするのですが、火はついたものの今度は灯油が切れてしまっていて…。
玄関に置いてあった手動ポンプを思い出し、パシュパシュと必死で灯油を入れました。案の定こぼしてしまい、玄関は灯油まみれ。でも、なんとかストーブには火が灯りました。
今思えばすごくあぶない状況ですよね。
そうやって悪戦苦闘しているうちに、両親が帰ってきました。母親が玄関を開けて「何この惨状は…」という表情を見せたものの、私の姿を見てすぐに「ありがとうね、頑張ったね」と、ギュッと抱きしめてくれました。その時の母の言葉とぬくもりは、今でも忘れられません。
そして不思議なことに、妻が入院し、我が子たちが母親のいない時間をそれぞれ工夫して過ごしている姿を見たとき、この昔の記憶がふっと蘇ったんです。
あの時の自分と、今の子供たちが重なって見えました。
苦しかった出来事の中にも、よくよく見つめてみると、感謝や気づきが詰まっている。そんなふうに、物事を受け止められるようになったのも、この会での学びのおかげだと感じています。
まさかのオチ:売上未入力事件
辛い出来事も、角度を変えて見れば全てがプラスの経験になる。そう確信し、「よし、やるぞ!仕事もとことんやるぞ!」とスイッチを入れ直し、これまであまり力を入れてこなかった営業活動にも本腰を入れよう、ビジネスの学びも実践に移そう、と決意を新たにしました。
ところが、3月の上旬になって税理士さんから一本の電話が。「こんぷさん、2月の売上、まだ入力されてませんよ」と。……もう、自分の中で大爆笑です。これ、本当の話なんですよ。数字がおかしいと思っていたのは、単に売上を入力し忘れていたから。結果的に、売上は昨年を少し上回り、黒字だった、というオチなんです。
でもね、あの約1ヶ月間の苦しみやモヤモヤは、自分にとって本当に良かったと思っています。「このままぬくぬくと生きていたらダメだぞ!」「もっと真剣に仕事に取り組め!」と自分に言い聞かせ、実際いくつかの新しいアクションをはじめるきっかけとなり、今成果に繋がってきています。今年度も、さらに出演機会が増えるに違いありません!
「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」の世界
さて、私はマジックショーだけでなく講演活動もさせていただいていますが、ラジオやテレビに出演することもあり、言葉を扱う機会が多い仕事です。言葉には苦手意識もあるのですが、やはり言葉の重要性は日々感じています。
先日、ある小学校を訪問した際、控室として使わせていただいた教室に、一枚の貼り紙が目に留まりました。そこには「ふわふわ言葉とちくちく言葉」と書かれていました。 「ふわふわ言葉」の欄には、「頑張ろう」「美味しいね」「一緒にやろう」といった、心が温かくなるような言葉がたくさん。 一方、「ちくちく言葉」の欄には、「嫌い」「美味しくない」「ダメ」「いやだ」といった、心を刺すような言葉が並んでいました。
もちろん、子供たちには「ふわふわ言葉を使いましょうね」と促すためのものですが、これを見た瞬間、「これって、まさに倫理の世界だな」と思ったんです。私たち倫理法人会の会員は、この「ふわふわ言葉」に満ちた世界を作りたいと願っている。そして、この会に来ると、実際に「ふわふわ言葉」で溢れている。これは本当に素晴らしい言葉だと思い、以来、大切にしています。
どちらの世界に住みたいかと問われれば、誰だって「ふわふわ言葉」の世界ですよね。でもそれは、自分がどちらの世界に身を置くかということだけでなく、自分自身がどちらの言葉を発しているか、ということが非常に重要だと思うんです。きっと、「ふわふわ言葉」を話す人は「ふわふわ言葉」の世界に住み、いくら「ふわふわ言葉」の世界にいたいと願っても、「ちくちく言葉」を発している人は、自然と「ちくちく言葉」の世界に引き寄せられてしまうのではないでしょうか。そんなことを感じました。
17年目のゼロ地点:プロマジシャンとしての歩みと法人化
少し私の自己紹介と、倫理法人会との出会いについてお話しさせてください。 私はプロマジシャンになって、今年で17年目になります。その前はサラリーマンを17年間、地元の百貨店である大和デパートで働いていました。つまり、サラリーマン人生とプロマジシャン人生が、ちょうど同じ17年で重なる節目の年なんです。そこで、今年のテーマを「17年目のゼロ地点」と掲げ、もう一度ここから心をリセットして、新たな気持ちでしっかりと歩んでいこうと決意しています。
マジシャンという職業を選んでから、「毎年、何か新しい成長をしたい」という思いが強く、様々なことにチャレンジしてきました。「去年と違う自分になるためには、何をすべきか」を常に考え、行動してきた結果、約5年間は売上も出演の機会も順調に増え続けました。
ところが、5年目を迎えた頃、ふと気づいたんです。「世の中って、螺旋階段じゃないんだな」と。螺旋階段なら、努力すれば必ず上へ上へと登っていけるはずです。でも、ある時、「あれ? これ以上、登れないぞ」と感じる壁にぶつかったんです。 その時、こう思いました。「ああ、世の中って、大きな輪っかがいくつも積み重なっていて、どれだけ頑張っても同じ輪の中をぐるぐる回っているだけなのかもしれない」と。次のステップに進むためには、その輪から抜け出し、上の輪へ這い上がらなければならない。これこそが、倫理法人会で学ぶ「自己革新」なのだと気づきました。何かを大きく変えない限り、次のステージには進めない。ちょうど5年目が、そのタイミングだったのだと思います。
そこで、「よし、法人化しよう!」と株式会社コンプオフィスを立ち上げました。そして、まさにそのタイミングで、倫理法人会への入会のお誘いをいただいたのです。声をかけてくださったのは、県の副会長でいらっしゃる田辺さん。イベント業界の先輩である田辺さんが、ある日突然我が家を訪れ、「こんな会があるんだけど、どう?」と。私は二つ返事で、「そりゃあ、田辺さんに誘われたら入りますよ!」と、すぐに入会を決めました。それが、倫理法人会との出会いでした。
素直さが生んだ3つの目標と「不良役員」時代
入会する時、自分なりに小さな目標を立てました。
今思えば、あの時あまり難しく考えすぎずに「まずはやってみよう」と動いたことが、結果的にはとても良かったなと感じています。
最近は、お誘いする立場になることも増えてきて、あらためて思うのは、「実際にやってみないと分からないことがたくさんある」ということです。よく「くわず嫌い」と言いますが、それと同じで、どれだけ説明を聞いても、参加して初めて感じることって本当に多いんですよね。
もちろん、しっかり考えてから入会される方もたくさんいらっしゃいますし、それも素晴らしいことだと思います。ただ、事前にすべてを理解してから動こうとすると、一歩を踏み出すのが難しくなることもあります。「分からないけど、まずはやってみよう」という気持ちが、結果的に続ける力や学びに繋がる場面もあるんじゃないかと、いろんな方と接する中で感じるようになりました。
私自身、その時に立てた目標は3つありました。「人見知りを克服すること」「人前で堂々と話せるようになること」「そして、それを仕事に繋げること」。今振り返ると、当時の目標がどれだけ小さな枠に収まっていたか、自分でも少し驚きます。ありがたいことに、それらはすぐに達成できて、それ以上の学びや気づきを、この会でたくさん得ることができました。
「せっかく入会したんだから、毎週モーニングセミナーには通おう」と決めて、足を運びました。役員にも早いうちに任命していただいたのですが、当初は正直「モーニングセミナーに出ていれば十分」と思っていて、役員会にはまったく出席しない、いわゆる“不良役員”でした。「なぜ自分の時間をそこに使わなければならないんだろう」と思っていたのが、当時の本音です。
両親への小さな実践がくれた大きな気づき
しかし、倫理法人会に入会し、毎週モーニングセミナーに通う中で、私の考え方に大きな変化が起きました。きっかけは、ある講話で聞いたひと言でした。
「親を大切にしない人間が、大業を成し遂げることはできない」。
その言葉が、不思議とすっと胸に入ってきたんです。
それから私は、ある「実践」を始めることにしました。それが、「毎週モーニングセミナーの後、必ず両親に会いに行く」という、本当にささやかな実践でした。特別な理由があったわけではありません。ただ、その言葉が心に残り、「今の自分にできることをやってみよう」と思ったんです。
実践の内容は、本当にシンプルでした。セミナーが終わったら実家へ向かい、一緒にお茶を飲む。それだけです。最初のうちは、正直ぎこちない会話しかできませんでした。面と向かって話すことが、実はあまりなかったんだなと、その時気づかされたほどです。両親も、最初は戸惑っていたように見えました。
でも、何度か続けていくうちに、少しずつ変化が生まれました。私が行くと、好物が用意されていたり、秋になれば大好きな柿がそっと置かれていたり。ああ、ちゃんと待ってくれてるんだなと感じるようになりました。そうした積み重ねの中で、自然と会話も増え、もともと仲が悪かったわけではありませんが、距離がどんどん縮まっていくのを感じました。
ある時、新聞の取材で「昔の写真を持ってきてください」と頼まれ、両親にアルバムを出してもらったことがありました。三人でアルバムを囲んでお茶を飲みながら、昔話に花が咲いたあの時間。今思い返しても、本当にかけがえのない、大切なひとときでした。
アルバムの中には、私の子供の頃の写真だけでなく、両親の若い頃の写真もありました。写真を見ながら話を聞くうちに、「ああ、自分のルーツってここなんだ」と実感できて、なぜか心が強くなっていくような感覚があったんです。
「行き帰り、気をつけてね」:母の言葉が変えたステージ
そして、私にとって大きな転機となったのが、県外での大きな仕事が決まった時のことです。それまでは富山県内を中心に活動していたので、やはりドキドキしましたし、大きな緊張感がありました。周囲の仲間たちからは、「頑張ってこいよ!」「県外で大成功して、そのまま東京進出だ!」なんて激励の言葉をもらいました。東京進出なんてあまり魅力を感じませんが、そう言ってもらえるのは素直に嬉しかったです。
しかし、そんな話を母親にした時、母が私にかけた言葉は、「行き帰り、気をつけてね」という、ただそれだけでした。 「ああ…」と、胸を突かれました。こんな言葉を、一体誰がかけてくれるでしょうか。その一言が、ものすごく心に響いたんです。 「そうだな、まずは無事に帰ってくることが一番大事だな」と心に刻んで出発しました。そして、いざステージに立つ直前、これまでは「どうすれば盛り上がるだろうか」「どんなマジックをすれば喜んでもらえるだろうか」「緊張しているけど、絶対に緊張していないキャラを演じきろう」などと、そんなことばかり考えていたのが嘘のように、ふと母の「道中気をつけてね」という言葉が心に降りてきたんです。
すると不思議なことに、スーッと肩の力が抜け、何とも言えない穏やかな気持ちになりました。言葉ではうまく表現できないのですが、まるで自分一人ではないような、温かい何かに包まれているような感覚。その時、緊張感などとは全く無縁の心境でステージに上がり、パフォーマンスを披露したところ、なんと、今までで一番と言っていいほど会場が盛り上がったんです!
「芸は人なり」:倫理の真髄との出会い
これには本当に驚きました。「なんだこれは!」と。何の根拠もない、科学的な説明もつかないけれど、これが事実なんだと直感しました。そして、「倫理法人会の学びとは、こういうことなのか!」と腑に落ちたんです。「両親を大切にしましょう」「縦のつながりを大事にしましょう」と言われますが、その本当の意味がここにあるのだ、と。結局、全ての答えは自分の心の中にあり、その心の中の葛藤や迷いが整理された時、人は自分自身が本来持っている力を最大限に発揮できるのだ、という感覚。その大成功をきっかけに、私の仕事はさらに大きく広がっていきました。おかげさまで、年間700件ものお問い合わせをいただけるようになり、本当にありがたい限りです。
マジシャンの平均年収をご存知でしょうか? AIなどで調べると出てくると思いますが、だいたい200~300万円だそうです。田辺さんのようなイベント会社は億単位の売上があると思いますが、個人で活動する場合、まずは年収1000万円が一つの目標になるかと思います。私はそれをプロ2年目で達成し、5年目にはその3倍近くの売上を得るまでになりました。
まさに絶好調。「このままどこまでも登りつめてやる!」と思っていた矢先、またしても、あの「輪っか」の感覚に襲われました。螺旋階段ではなく、同じ場所をぐるぐる回っているような感覚。「このままでは限界がくるな」と。アシスタントを雇い、自分が出演できない場合は仕事を分担したりもしていましたが、次の壁を越えるためには、何か新しい要素が必要だと感じていました。
そんな時、舞い込んできたのが「高岡市倫理法人会の会長になりませんか?」というお話でした。 「よし!会長になれば、また新しい自分に出会える!次のステップに進めるはずだ!」と直感しました。しかし、即答はせず、まずは妻に相談しました。妻の理解と協力なしには務まらないと思ったからです。妻が「いいんじゃない?やってみたら」と背中を押してくれたので、翌日すぐに「お受けします」と返事をしました。
これでまた自分は変われるぞ、という熱い思いを胸に、まずは倫理指導を受けてみることにしました。会員ならいつでも何度でも受けることができる特典です。倫理を学んだ経験豊かな経営者の方にアドバイスをいただけるすばらしい機会です。それまで一度も受けたことがなかったので、どんなものかも知らずに会長を務めるわけにはいかないという思いもありました。どんな質問をしたのかも覚えていないくらい、たわいない質問だったと思います。「人前に出るとドキドキするんですけど、どうしたらいいですか」といったような。目からウロコの様々なアドバイスをいただきました。
その中で、「実は次に会長を受けることにしたんです」というお話をした時に言われた一言が、「高岡市倫理法人会は暗い」でした。「もっと明るく、もっともっと明るくしなさい」と。この言葉が、その後3年間の会長時代を通して、私にとって最も重要なキーワードとなりました。
実を言うと、確かに当時の高岡のモーニングセミナーは、どこか活気がなく、「暗いな」と感じていました。参加者も最大で17人程度、ナイトセミナーや基礎講座に至っては2、3人ということもざらでした。これではいけない。「よし、とにかく明るくしていこう!」と決意し、「明るさ」を追求し続けました。もちろん、一筋縄ではいきませんでしたが、コロナ禍で会員が70社くらいまで減りましたが、最終的には会員数が100社を超え、私が最後に講話させていただいた経営者モーニングセミナーには70社近くの方々にお集まりいただけるほど、会のエネルギーは高まり、全く別の組織に生まれ変わったという実感があります。これもひとえに、「明るさ」を追求した結果だと思っています。
コロナ禍という名の地獄と「壁の前でうろうろする」勇気
さて、会長をお受けし、倫理指導も受け、「さあ、これからだ!」と意気込んでいた矢先に、世界を襲ったのが新型コロナウイルスでした。 これからという時に、コロナは瞬く間に世の中に蔓延し、私たちの日常を一変させました。人が集まることが生業である私たちのような仕事は、真っ先に影響を受けます。電話が鳴るたびにキャンセル、キャンセル、キャンセル…。あの時の絶望感は、今でも忘れられません。マジシャンとしての仕事は、完全にゼロになりました。テレビやラジオの仕事がわずかに残ってはいましたが、それは売上のほんの一部に過ぎません。「このままでは、本当にダメになる…」。
この状況が続けばどうなるのか、自分なりに試算してみました。とりあえず1年くらいは何とかなるだろう、という見通しは立ちましたが、コロナ禍はそんなに甘くありませんでした。「もう最悪だ。家を売って、いっそのことマジシャンも辞める覚悟をしよう」。そんなことまで妻と話し合いました。
「倫理法人会どころじゃないよ…」。月々1万円の会費にも不安を感じる状況でした。しかし、「会長を受けたからには、途中で投げ出すわけにはいかない」という強い思いもありました。理屈ではなく、途中で逃げ出すことだけは絶対にしたくなかったんです。
そんな中で始まったのが、Zoomでの経営者モーニングセミナーでした。画面越しに見る仲間たちの顔は、意外なほど元気でした。そして、セミナーが終わる頃には、不思議と自分自身もエネルギーが湧いてきて、いつもの自分を取り戻しているんです。「ああ、やっぱりこの会はいいな」と思うのですが、セミナーが終わるとまた現実に引き戻され、暗い気持ちになる、その繰り返しでした。
そんな時、ある講話者の方のお言葉が、私の心を打ちました。それは、「大きな壁にぶつかった時は、壁の前でうろうろする」という言葉です。 どういう意味か。とにかく立ち止まらず、壁の前を行ったり来たりする。そうすれば、小さな穴が見つかるかもしれないし、ヘリコプターが助けに来てくれるかもしれない。「挫折を味わいながらも、うろうろと行動し続けること、そのものに希望は宿る」。 「これだ!」と思いました。マジシャンとしてのプライドやこだわりなんか、もうどうでもいい。とにかく、できることを何でもやってみよう、うろうろしてみよう!と。心がスッと軽くなり、前向きな気持ちに切り替わった瞬間でした。人間って、本当に「言葉」で変われるんですね。
そして、こうも思いました。「どうせマジシャンとしての仕事は暇なんだから、倫理法人会の活動に全力を注げばいいじゃないか!」と。出演の機会がないなら、むしろこちらに全力投球できるチャンスだ、と。
そうこうしているうちに、私が所属する高岡と、にいかわ倫理法人会が、同じ水曜日にZoomで合同モーニングセミナーを開催することになりました。2つの単会が合同でやると、また違ったエネルギーが生まれます。セミナーが終わった後は、本当に清々しい気持ちになり、「よし、今日も一日頑張るぞ!」と思えるのですが、パソコンの電源を切った瞬間に、また少し落ち込む自分がいる。
そんな私を再び救ってくれたのが、富山県倫理法人会の田辺副会長でした。本当に、何度助けられたことか分かりません。 Zoomモーニングセミナーが終わった直後に、田辺さんから電話がかかってきたんです。「コンプさんも大変だろう」と。「はい、大変です。出演の仕事が全くありませんから…」と窮状を訴えると、「実は、国の事業で、ある仕事があるんだ。今、仲間を集めているんだけど、一緒にやらないか?」と誘ってくださったのです。
「ありがとうございます!」と即答し、そのお仕事を4ヶ月ほどさせていただきました。本当にありがたかったです。収入が激減していた中で、この仕事が下支えとなり、なんとか生き延びることができました。今でも、心から感謝しています。
「芸は人なり」:志の輔師匠の金言と倫理の真髄
そのプロジェクトは、県内各地に拠点を設け、生活に困窮している方々を支援するというものでした。その仲間に入れていただいたのですが、それまでの私は、マジシャン一筋で、ネクタイを締めたりスーツを着たりすることに抵抗があるような人間でした。しかし、倫理法人会に入会し、「場に合わせることの大切さ」を学んでいたおかげで、スーツを着用し、ネクタイを締め、靴もきちんと磨くようになっていました。
ですから、そのプロジェクトにも、きっちりとスーツを着て、ネクタイを締め、磨いた靴で臨みました。周りを見渡すと、意外とラフな服装の人が多かったのですが、私は「自分はこれでいく!」と決め、挨拶もしっかりと、この会の学び通り入り口から丁寧に行うことを徹底しました。 それが評価されたのかどうかは分かりませんが、ありがたいことに、ある地域のリーダーを任せていただけることになったんです。リーダーになると、当然、収入も変わってきます。もし倫理法人会に入っていなかったら、もっとだらしない格好で、こんな機会もいただけなかったのではないか、と思います。本当に感謝しかありません。
こうして、コロナ禍という未曾有の危機も、倫理法人会の仲間や教えのおかげで、ある意味「楽しく」乗り越えることができました。
そして、この一連の経験を通して改めて感じたのが、ある「言葉」の大切さでした。それは、この倫理法人会に入ったばかりの頃に出会った言葉です。 立川志の輔師匠と食事をご一緒させていただいた時、師匠がポツリとおっしゃったんです。「コンプレッサー君、芸は人なんだよな」と。 「ああ、なるほど。『人』か」。どんなに素晴らしいマジックを演じても、どんなに高度なテクニックを磨いても、結局、最も大切なのは演じる「人」そのものなのだ、と。なぜ、その言葉がそれほど深く心に刻まれたかというと、家に帰って「芸は人」という言葉を検索してみたら、すでに亡くなられているある有名な落語家の名人が残した言葉だと分かったからです。
インターネットの記事にはこう書いてありました。 「芸は人なり。生まれてから今日までの人生のすべてが芸に出る。心の卑しい人は芸に卑しさが出る。気品、風格、艶、粋、すべてがその人が体験した人生そのものの反映である。だから怖い。いくら落語の勉強をしても、薄っぺらな人生を歩いた人の落語は面白くない。結局は芸は人間の大きさや優しさ、その人の人間性、人格そのものである」
この言葉に触れた時、これは落語に限らず、マジシャンにも、いや、もしかしたらあらゆる職業に当てはまるのではないか、と思いました。そして、「ああ、倫理法人会とは、この『人』を学ぶ場所なのだ」と、入会した時の思いと繋がったのです。
磨くべきは技よりも「人」:とっさの言葉の重み
では、「人」を磨くことで、一体何が変わるのでしょうか。
倫理法人会では、マジックのやり方や演出テクニックを学ぶことはできません。
けれど、この会での学びを続けるうちに、私は気づいたことがあります。
それは、「どれだけ技術があっても、それだけでは人の心は動かない」ということです。
もちろん技術は大切です。歌手であれば歌が上手いこと、マジシャンであればマジックができること、それはプロとしての前提です。
でも、それだけでは伝わらない。もっと大切なのは、「何を演じるか」よりも、「誰が演じるか」。
同じ技術でも、それをどんな人がどう届けるかで、受け取り方はまるで変わってくる。私はそれを、現場で何度も実感してきました。
倫理法人会は、技術やノウハウを学ぶ場ではありません。
ここで学べるのは、「自分自身をどう磨くか」「どんな姿勢で日々を生きていくか」といった、人としての土台の部分です。
そして不思議なことに、そうした学びを続けていると、少しずつですが自分の中に変化が生まれてくるんです。
そのひとつが、「とっさの言葉」です。
思いがけない出来事や、誰かとのやりとりの中で、ふと口をついて出てくるひと言。
それが、どこか以前とは違ってきたように感じるんです。言おうと思って準備した言葉ではなく、とっさに出た言葉の中に、その人の人柄や価値観が滲み出る。
私は、そんな言葉を発せられる人間になりたいと思っています。
マジックの現場でも、同じことを感じます。
どんなに派手な演出をしても、それだけで終わってしまえば記憶には残りません。
でも、お客様の何気ないひと言に返したちょっとした言葉、その場の空気をふんわり包み込むようなやりとり。
そういう部分が印象に残り、「またあの人のマジックが見たい」と思っていただけることがあるのです。
よく「口が滑った」とか「つい言っちゃった」と言いますが、それは結局、自分の内側にあるものが出てきただけのこと。
心の中にない言葉は、どんなに頑張っても口から出てきません。
だから私は、自分自身の「言葉の力」を磨きたいと思っています。
マジシャンとしても、人としても、ずっと大切にしていきたいテーマです。
そしてこの「言葉を磨く」ということは、倫理法人会で学び続け、自分を見つめ、整えていくことそのものなのだと、私は思っています。
これが、「ことばの力」という、本日のテーマでした。
おわりに:ライブな学びの場で、共に成長を
さて、ゲストの皆様、本日は3名ほどいらっしゃると伺いました。ありがとうございます。もし、まだ入会されていない方がいらっしゃいましたら、ぜひこの機会に仲間入りしていただき、一緒に学んでいけたらこんなに嬉しいことはありません。
そして、会員の皆様へ。
本日この場に立たせていただく前に、会長のスピーチを拝聴しましたが、いやもう…正直、あまりに素晴らしくて、私、少し緊張してしまいました(笑)。
内容の深さもさることながら、言葉の一つひとつに温かさと力強さがあって、聞き終えた瞬間、「これを聞けただけでも、今日は来てよかった」と心から思ったほどです。
あれは本当に、記憶に残るスピーチでした。
やはり、このモーニングセミナーは「ライブ」です。その時々で、素晴らしい気づきがある時もあれば、「ん?」と思う瞬間もあるかもしれません。でも、それが人間が運営している会の面白さであり、醍醐味です。型は同じでも、ライブだからこそ生まれる言葉があり、どの瞬間に、どのタイミングで、自分が何に出会うかは、毎週通い続けなければ分かりません。そして、通えば通うほど、「当たり」に出会う確率も高まります。ぜひこれからも、共にこの会で学んでいきましょう!ほんと、すばらしい会ですよね。
以上で、本日の私の講話を終わらせていただきます。ご清聴、誠にありがとうございました。
【富山県倫理法人会】
https://www.rinri-toyama.com
