年老いた手品師

  • vol.51/コンプレサー通信2020年1月号掲載

大規模なパーティーでのイリュージョンショーを終え汗だくのコンプさん。

剣を刺したり、縛ったり縛られたり。

主催者様のご要望で、大がかりなマジックだけで約一時間の公演を行ったのだ。

手先で演じるマジックとは違い、準備なども含め、なかなかの運動量だけど、客席の反応が疲れを吹き飛ばしてくれるのね。

充実感が半端ない。

汗を拭きながら呼吸を整えていると、年老いたアマチュア手品師さんのエピソードを思い出した。

その手品師はキラキラ輝くアイドルのような衣装を身にまとい、さっそうと登場した。

サングラスをかけているけど、かなりのおじいちゃんだから年齢を隠すのは難しい。

昭和テイストのBGMにあわせて箱の中に入り、開けるとおじいちゃんは消えていた。

次の瞬間、客席にスポットライトが当てられ、そこに、瞬間移動した手品師がかっこよく立っている・・・、はずだった。

客席から笑い声が上がるが、次第にあたたかい拍手にかわっていく。

なんと実際は息の上がったおじいちゃんが必至に走りこんでくるところがライトアップされたのだ。

同じマジックを演じるのにも、その年齢に応じたスタイルというのがあると思う。

体力は必ず衰えていくからね。

衣装や化粧で見た目はごまかせても、発する言葉や醸し出す雰囲気には、その人が出るからね。

今年、おかげ様で芸歴十二年目、四十六歳になるコンプさん。

まだまだ体力には自信があるけど、見た目はそれなりに老けてきた。

時間の流れに逆らって若さを追い求めるよりも、年を重ねるごとに深みが増していくマジシャンでありたいなぁと思うのです。

今年もじっくり、楽しんで、年をとろう。

悔いのない一年にしよう。

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