本物と偽物

  • vol.71/コンプレサー通信2022年8月号掲載

一ドル銀貨を大量に使うマジックを演じたくってマジックショップにアクセス。

本物を買えば一枚九千円ほどの銀貨も手品用の偽物コインならば一枚六百円。

本物かどうかは関係のないマジックだからレプリカを注文してみる。

届いたコインを見てびっくり、本物を知らない人がみたら偽物だとは気づかないのではないかと思う仕上がり。

ずっと使っている本物の銀貨と見比べてみたら真新しい偽物のほうがキレイだと感じてしまい、九千円と六百円の価格差を思い出して笑ってしまった。

本物銀貨の汚れが気になり専用の薬剤をつけて丁寧に磨き上げた。

傷や凹みは隠せないけど、シルバー独特の白い輝きにうっとり。このコインに愛着があるんだよなぁ。

改めて偽物コインを見たら先ほど美しいと感じた輝きが、ずいぶんと安っぽく見えるではないか。

どれだけ新しくてもやっぱ本物にはかなわない。

本物ってなんだろう、と考えてみる。言葉の意味を調べてみたら「偽物や見かけばかりの物ではない本当の物」と書いてあった。

あれこれ考えるうちに「飽きがこない」のが本物なのではないだろうか、という答えのようなものにたどり着いた。

本物は見れば見るほどよくなっていくし、使うほどに味が出てくる。

時間の経過と共に価値が上がるのは本物の証だよなぁ。

逆にニセモノは最初はキレイでも使っているうちにメッキがはがれてしまったりね。

本物の銀貨を眺めながら本物のマジシャンでありたいなぁと思う。

そのためには質を上げるしかないってことなんだろうな。

質を上げる努力をしなきゃね。

マジックはもちろん、自分自身の質を。

前の記事

本名あっての芸名