エッセイ:人生初のマジックライブで学んだこと
人生初のマジックライブで学んだこと
十年以上前、人生初の「単独自主ライブ」を開催し、活動を飛躍させる大きな節目となった。
マジシャンになったばかりのあの頃、ステージのない路上や、泥酔の観客しかいないパーティーなど、環境が整っていないところでの出演が多かった。
プロとしての現場力を磨くありがたい場所ではあったが、ウケない理由を環境や観客のせいにしてストレスを感じることが多かった。
「場は自分で作るものだ」
落語家の師匠のお言葉をきっかけに、自由に演出ができる、言い訳のできない環境で行う自主ライブの定期開催を決めた。
ちょうどその頃ラスベガスで観たマジックショーは刺激となった。
最高の環境で、マジックを目的に集まった観客を、単独で長時間楽しませる一流マジシャンの姿は眩しかった。
最初のチケット販売は大変だった。
告知しても勝手に売れるほど知名度や実績がなかったから必死に売り歩いた。
買っていただいた方を思うと、練習にも自然と力が入った。
主催者からまとまったギャラをいただくイベント出演との違いを強く感じた。
ライブ当日、無事満席で終えた時の感動は今もハッキリと覚えている。
「やった奴にしか分からないんだよなぁ」
落語家の師匠に報告したとき、ご自身の歩みを振り返るように言ったそのお言葉が宝物となった。
やり遂げた後の多くの喜びを知った経験が、その後の活動につながっている。
10年以上前に踏み出した一歩が今を作っている。だから10年後を支える今日を無駄にしてはいけない。自分にそう言い聞かせる。
次の一手を考え、動き続けていこう。楽しみながらね。
※vol.71/コンプレサー通信2022年9月号掲載