12年分のFacebook投稿を、AIエージェントが検索アプリにした話
こんにちは!マジシャンのコンプレッサーです!
今回はマジックではなく、AIのお話です。
Facebookの非公開グループに12年分ためこんできた出演データを、AIエージェントに読ませました。そうしたら、会場名でも演目名でも「去年の今ごろ」でも数秒で引ける検索アプリになってしまったんです。
置き場所を変えたのではありません。置きっぱなしだった記録の、取り出し方が変わりました。
ちなみにAIエージェントというのは、質問に答えるだけのAIではなく、パソコンの中で実際に手を動かしてくれるAIのことです。ブラウザを開く、文章を読む、ファイルを作る。そこまでやってくれます。

紙のメモから、Facebookの非公開グループへ
出演記録の話をするには、まず相棒のことから始めないといけません。
アシスタントのともやんは、小学校からの幼馴染で、もう18年の相棒です。マジシャンになりたての頃から、公演のたびにその日やった演目を紙に書いて残してくれていました。何をどの順番で、何分やったのか。全部ともやんの手書きです。
それが2014年の秋から、Facebookの非公開グループに移りました。メンバーはたった3人。コンプレッサーとともやんと、所属マジシャンの友蔵さんだけの、身内の記録置き場です。
会場名、主催者、当日のメモ、そして演目リスト。公演のたびに、その日の勢いのまま書き込んでいく。それを12年やってきました。
正直に言うと、当時は「あとで検索するため」なんて考えていませんでした。ただ、書いておかないと忘れるから書いていた。それだけです。
なぜ困っていたのか?Facebookの検索が仕事に使えないから
理由はこれに尽きます。Facebookのグループ内検索が、仕事の道具として使えなさすぎたのです。
こういう場面、けっこうあるんです。
- 「同じ会場に去年も呼ばれた。あのとき何をやったっけ?」
- 「このお客さま、以前も来てくださっている。同じネタをぶつけたらまずい」
- 「ロープのマジック、だいたい何分で終わるんだったかな」
そのたびにFacebookの検索窓に会場名を打ち込むわけですが、出てこない。出てきても順番がめちゃくちゃ。しばらくスクロールしていると、そもそも何を探していたのか忘れる(笑)
12年分の記録が目の前にあるのに、引き出せない。ためてあるのに使えないというのが、いちばんもったいない状態でした。
ともやんが入院した昨年6月に、これは痛いほど思い知りました。荷物の段取りも、ショー中の選曲も、道具の出し入れも、二人の「暗黙の了解」で成り立っていて、どこにも書き出されていなかった。暗黙の了解は強みですが、同時にもろさでもあるんですよね。
AIエージェントに何をさせたのか
やったことは、そんなに難しい話ではありません。
- Facebookの非公開グループを、AIエージェントに読ませる(ログイン済みのブラウザを操作させて、年ごと・キーワードごとに投稿を集めさせました)
- 集めた文章から、日付・会場・演目・尺を取り出させる(尺というのは、その演目にかかった時間のことです)
- バラバラな書き方を揃えて、まとまった形にさせる
- すぐ探せる検索アプリに組み立てさせる
プログラムを書いたのはAIエージェントです。こちらがやったのは「こういうものが欲しい」と話したこと。使っているのはClaude Codeという、パソコンに入れて使うタイプのAIです。ファイルを読んだり、ブラウザを動かしたり、プログラムを書いて動かしたりまで任せられます。
このやり方は今回が初めてではなくて、出演カレンダーをWebアプリにしたときも同じでした。
https://comp-office.com/ai/ai-performance-calendar/
同じマジックが、21通りの名前で書かれていた
ここがいちばん、AIに助けられたところです。
12年間、その日の勢いで書き続けたメモです。書き方が揃っているはずがありません。
たとえば「Do as iロープ」というマジック。数えてみたら、21通りの書き方で記録されていました。大文字だったり小文字だったり、全角スペースが混ざっていたり、「ルーティン」が付いたり付かなかったり、頭に□が付いていたり。打ち間違いまでそのまま残っています。

これを1つにまとめて、はじめて「いつ・どこで・何をやったか」がつながって出てくるようになりました。
まとめるといっても、元の書き方を捨てるわけではありません。表に出す名前は代表の1つに寄せて、検索するときは元の21通りでも引っかかるようにしてある。だから、うろ覚えの書き方で打ち込んでもたどり着けます。
この地味な作業こそ、人がいちばんやりたくなくて、AIが得意な仕事でした。手作業でやろうとしたら、途中で心が折れていたと思います。
できあがったのは、4つの入口を持つアプリ
完成したアプリには、探し方の入口が4つあります。
① 公演 — 日付順に並んだ公演カード。その日の会場と演目がそのまま出ます。「去年の今ごろ」「一昨年の今ごろ」というボタンがあるのがお気に入りで、季節ものの仕事をたぐり寄せるのに、いちばん使っています。

② 演目 — 大量にたまった過去の演目リストが、マジックの名前ごとにまとまって並びます。最後にやったのはいつか、どんな書き方をされていたか。バラバラだった表記も「別表記」として下に残してあります。

③ 会場 — 会場ごとに、最初にうかがった日と直近の日付が並びます。「この会場、5年ぶりだったのか」というのが一目でわかる。

④ その他 — ここが、いちばん新しく足したところです。演目以外の実務の情報を、10の区分に分けて引けるようにしました。
段取り・時間(入り/開演/終演/撤収)、人数・客層、音響・機材、移動・アクセス、料金・謝礼、体制・同行、気づき・手応え、ネタ・研究、告知・広報、連絡先・担当。

「あの会場、駐車場どうだったっけ」「マイクは何本借りられたっけ」「入りは何時だったっけ」。これ、演目よりもあやふやになるんです。しかも忘れていると、当日そのまま困る。
演目のリストが「何をやったか」の記録だとすると、こちらは「どう回したか」の記録です。入り時刻も音響のメモも、12年分のメモの中にずっと書いてありました。ただ、書いてあるだけで、探せなかった。
正直に言うと、この仕分けは賢くありません。「マイク」と書いてあれば音響、「◯時入り」とあれば段取り、という言葉の当てはめでやっています。だから的外れなものも紛れ込みます。それでも、ゼロから思い出そうとするよりはるかに速い。
公演・演目・会場のカードからは、元のFacebook投稿にワンタップで飛べます(その他のカードは、その日の公演へ移ります)。要約だけでは心配なとき、原文をその場で確かめられる。これが意外と大事でした。
アプリはインターネット上に置いてあって、スマホのホーム画面から開けます。中身は仕事のデータなので、ログインした関係者しか開けないよう鍵をかけてあります。
12年分のデータが教えてくれたこと
引き出せる形になった瞬間、今まで見えていなかったものが出てきました。
- くり返し使っている演目は、思っていたよりずっと少なかった。 定番として何度も出しているのはごく一部で、あとは長いしっぽのように散らばっている。ここまで偏っているとは思っていませんでした
- 同じ会場に、何年もあいだを空けて呼んでいただいている。 前回いつうかがったかがすぐ出るので、「あのときと同じ構成にならないように」を考えやすくなりました
- 感染症の時期だけ、残っている記録がはっきり減っている。 イベントが次々と消えていったあの時期と、そのまま重なります
3つ目は、いちばん胸に来ました。あの頃のことは覚えていますが、こうして記録の並びとして見ると、また違うものがこみ上げてきますね。
記録って、こういうものなんですね。
9割は取れた。でも、まだ取れていないものがある
ここは正直に書いておきたいところです。
AIが集めてきた投稿は、9割ちょっと。
「本来あるはずの投稿のうち、どれくらい拾えたか」を年ごとに測ると、ほぼ取れている年もあれば、7割しか取れていない年もあるというのが実情です。
さらに、機械が拾ったままなので、演目でないものも混ざっていました。会場の名前も、イベントの名前も、当日の人数までもが「演目」として並んでいたんです。
これは見つけて直させました。いまは建物の名前や催しの名前は演目として拾いません。それでも、同じ会場が「◯◯小学校」と「今日の◯◯小学校」の2つに割れて並ぶような取りこぼしは残っています。きれいなデータベースではありません。
なぜこれを書くかというと、確かめずにアプリを渡して、痛い目を見たからです。
「ちゃんと全部取れました」と自信満々で渡したら、直近に出演したホテルの名前で検索しても何も出てこない。あとで測ったら、実際には4分の1しか拾えていませんでした。
AIが「できました」と言ったことを、そのまま信じてはいけない。
いまは取り込むたびにどれくらい拾えたかを測って、落ちている年を狙って取り直すようにしています。これがAIを仕事に使ううえで、いちばん高くついた学びかもしれません。
「これ、抜けてない?」と言えたのは、その場にいたから
つい先日も、こんなことがありました。
ある会でシックスカードとギロチンをやったのに、アプリで見ると演目が空っぽ。おかしいと思って調べてもらったら、原因は「演目が3つ以上並んでいなければ演目と見なさない」という足切りでした。出番の短い日が、まるごと消えていたわけです。
投稿の原文にはちゃんと書いてあったので、機械でも見つけられたはずの抜けです。それでも実際に気づいたのは、その日ステージに立った人間のほうでした。AIは、みずから掘った落とし穴をわざわざ踏みには行かない。
直したあと、もうひとつお願いしました。同じ形の抜けが起きていないか、取り込むたびに自動で見にいく検査を足してもらったんです。今回消えていた公演を名指しで見張るのと、最近の公演で演目が空っぽのものを一覧に出すのと、2つ。
これで全部を防げるわけではありません。それでも、一度やられた手口には二度とやられなくなる。気づいた抜けを、その場で直して終わりにせず、機械の見張りに変えておく。ここがいちばん効くところだと思っています。
AIエージェントにFacebookを触らせるのは、正直リスクもあります
もうひとつ、正直な話を。
Facebookのグループには、投稿をまとめて取り出す公式な方法がありません。 グループ向けのAPI(外部のプログラムから使うための窓口)は2024年4月に廃止されていて、管理者であっても投稿を一括で書き出す機能はないんです。公式のデータダウンロードもありますが、出てくるのは書き手ひとりぶんだけ。ともやんの書いた記録は1件も出てきません。
3人がそれぞれ書き出したものを持ち寄って合わせる、という手もあります。ただ12年分をこの先も毎週続けることを考えると、現実的に残った選択肢はログイン済みのブラウザをAIエージェントに操作させる方法でした。これは本人のアカウントで動かしているのと変わりません。やりすぎれば「不正な自動化」とみなされて、アカウントを止められる可能性は正直ゼロではないと思っています。
だから、こういう線を引いています。
- 一度に全部取りに行かない。12年分を集めた最初の1回だけは腰を据えてやりましたが、そのあとは週に一度、前回から増えたぶんだけ
- 急がせない。人が読むのと変わらない速さで動かす
- 取れたつもりにならない。取り込むたびに、どれくらい拾えたかを測る
- 完全な放置にはしない。人が見ている前で走らせる
念のために書いておくと、これはFacebookが認めた安全基準ではありません。あくまで自社のデータを自社で扱うために引いた、こちらの線引きです。
最後の1つが特に大事だと思っています。夜中に勝手に動く仕組みにすることもできるんですが、それはやめました。便利だからといって、アカウントを預ける怖さを軽く考えてはいけないと思うからです。
大げさなことは、何もしていません
こういう話をすると「プログラムが書けるんですね」と言われるんですが、書けません。ほんとうに1行も書けないんです(笑)
やったのは、困っていることをそのまま言葉にして、AIエージェントに渡すこと。「Facebookの検索が使えなくて困ってる。12年分の記録を引けるようにしてほしい」——出発点はこれだけでした。
もちろん、そこから何度もやり直しています。取りこぼしを見つけて取り直し、演目の名前を揃え直し、鍵をかけ直し。任せっぱなしで完成したわけではありません。それでも、コードを1行も書かずにここまで来られたのは事実です。
メールの処理も、音声の文字起こしも、経理も、同じやり方で任せています。
https://comp-office.com/ai/ai-agent-secretary-mail-report-automation/
外出先からスマホでAIエージェントに指示を出すこともあります。
https://comp-office.com/ai/claude-code-remote-control-smartphone/
ラジオでこんなことを話したことがあります。
「道具は活用しながらも、あくまでも活用しているのは人間。この人間をしっかり磨き上げれば磨き上げるほど、道具の活用の仕方もレベルアップしていく」
AIに仕事を奪われる、という話をよく聞きます。でも実際にやってみると、奪われるどころか、今まで手が回らなくてあきらめていたことに手が届くようになるという感覚のほうがずっと近い。12年分の記録なんて、AIがいなければ一生ほったらかしのままでした。
みなさんの会社にも、こういう「ためてあるのに使えていないもの」、ありませんか。日報、議事録、LINEのやりとり、写真。もったいないですよ、ほんとうに。
よくある質問
AIエージェントでFacebookの投稿をデータ化できますか?
できます。ただしグループの投稿は一括で書き出す公式な方法が2024年4月になくなったため、ログイン済みのブラウザをAIエージェントに操作させる形になります。アカウント停止のリスクがあるので、一度に取りに行かない・急がせない・人が見ている前で走らせる、という線引きが必要です。
プログラミングができなくてもアプリは作れますか?
作れます。今回の演目検索アプリも、コードは1行も書いていません。ただし一発でできあがるわけではなく、できたものを確かめて直す往復は必要です。むしろ大事なのは、AIの出した結果が本当に正しいかを人の手で検算する姿勢のほうです。
AIが集めたデータは、そのまま信用していいですか?
いいえ。今回も拾えたのは9割ちょっとで、年によっては7割しか取れていません。演目でない言葉が演目として数えられている例もあります。「取れたつもり」がいちばん危ないので、どれくらい拾えたかを毎回測ることをおすすめします。
AI活用の相談はできますか?
はい。マジシャンとして現場に立ちながら、コンプオフィスの仕事をAIエージェントに任せる仕組みを毎日つくっています。実際に手を動かしてきたことしかお話しできませんが、逆に言えば机上の空論はありません。AI研修・講演のご依頼、Claude Codeの活用相談などお気軽にどうぞ。
おわりに
紙に書いてくれていたともやんの記録が、Facebookに移って、12年たって、AIエージェントの手で検索できる道具になりました。
12年前のともやんは、まさかこんなことになるとは思っていなかったはずです。書いていた本人も同じです(笑)
ただ、ひとつだけ確かなことがあります。残していなければ、AIがどれだけ賢くなっても何も出てこなかった。毎回きちんと書いてくれていた相棒がいたから、今回の話が成り立ちました。
コツコツ残してきたものが、10年たって突然、思ってもみなかった形で返ってくる。こんなに嬉しいことはありません!!
ご縁に感謝でございます。

